入院のワケ

このお話しは、2005/10/19『ショート入院』のウラ話(てゆーか、こっちがオモテ?)です。

ある晴れた休日。今日は運動会だ。長女は6年生で、次女は1年生。同じ小学校で2人一緒の運動会は、今年が最初で最後である。女房の両親は思いっきり気合いが入ってしまい、朝6時前に「ピンポーン!」。
義母 「なにやってんだがね! 今日は運動会だがね! まさかまだ寝てるんじゃないだろーねー!」
女房 「うわぁっ、大変だぁ、バーバが来たぁ!」
がばっ! 一瞬で飛び起きる女房。

私から見れば最強と言える女房だが、しかし母親(と姉貴)にはまったく歯が立たない。瞬時にして虎が猫にヘンゲする。

義母 「ご飯は炊いてあるんかい!」
女房 「昨日の夜、炊いておいたからだいじょーぶ」
義母 「どらどら‥‥。これじゃ足りないがねー! いまから炊きな、早くーっ!」
わっはっは、怒られてやんの。(笑)
義母 「子どもたちの支度はどうなってるがねっ?」
あ、はい、ただいま、全力でやっております。(汗)
義母 「おかずはどうするん」
女房 「唐揚げ作ろうと思って。あとは卵焼きと、ウインナーと‥‥」
義母 「さっさと作らなきゃだめだがねー!」
女房 「じゃ、じゃあ、油を‥‥」
義母 「なーにやってるんだがね、まずはご飯を炊く方が先だがねー!」

義母が来ると、いつも台風上陸並みの大騒ぎになるが、とにかくようやくご飯が炊け、
義母 「だがね、だがね、おにぎりだがね、にぎるがね〜」
義母が熊谷弁でおにぎりを作っていく。
義母 「あれ、ちょっと待った。おにぎりの具はどうするん!」
女房 「えーと、、、あ、これ。鮭フレークがあるよ」
義母 「おっし、をまぶしたおにぎり。美味しそうだがね〜」
義母の欠点は、何をやるにも「やり過ぎる」こと。とめないで放っておいたら、とても6人では食べきれない量のおにぎりを作ってしまった。。。


結局、朝ご飯を食いはぐってしまい、運動会開始直後から、
「う〜、腹減った〜。お弁当の時間はまだかぁ〜」
と、お弁当だけを楽しみに午前中を過ごし、お腹がいっぱいになった午後は、
「あ、Mちゃん、速かったね〜、見てたよ〜」
「おっ、Kくん、かっこよかったぞ〜」
と、知ってる子どもたちに声をかけて歩いたり、
「あ、Nちゃんのパパだ。今日も頭に花が咲いてるかな」
じゃかぁしぃ!( -"-σ
などと戯れて過ごしているうちに、やがて閉会式が近づく。
義父&義母 「最後まで見られなくて悪いけど、疲れたんで、あたしたちは帰るから」
女房の両親が熊谷へ帰っていき、また、次女は1年生なので先に終わるため、女房と次女も帰ることに。一方、長女が、
長女 「一緒に帰りたいから、終わるまで待っててくれる?」
と言うので、私だけ残ることに。
と・こ・ろ・が――。

あれ、なんだろ、なんか気持ち悪い。シャーッ!
あ? 吐いた? なんで? シャーッ!
ど、どうして、こんな‥‥。シャーッ! シャーッ!
やばい、なんかやばい、嘔吐がとまらない。シャーッ! シャーッ!
うが、今度は、下からも、きそうだ。な、なんとか、トイレまで‥‥。はう! と、遠い、トイレが遠い。校庭の一番隅じゃないか。なんだってあんなところに。も、もつのか、あそこまで。いや、もたせねば。シャーッ! はぁはぁ。ああ、足が動かない。動け、足。歩け、俺。シャーッ! はぁはぁはぁ。がんばるんだ、トイレまで。。。

嘔吐を繰り返しつつもなんとかトイレにたどり着き、トイレに入るや、上からも下からも流れっぱなし状態に。ようやくトイレから出るも‥‥だめだ、まだ出られない。さらに流れっぱなし状態に。そして襲ってくる激痛

もはや長女を待ってられない。帰るぞ、家に。トイレの中から女房に電話をかける。
お、俺だ。校庭の一番隅のトイレにいる。車で迎えに来てくれ。頼む‥‥頼むから‥‥お願い‥‥後生です‥‥。なんでって‥‥とにかく来て、俺の状態を見ればわかるから。
なんとかトイレから出て、壁際にうずくまり、激痛に耐えながら、女房が来るのを待つ――。
女房 「もうっ。どうしたのっ?」
腹が‥‥激痛が‥‥吐いて‥‥下からも‥‥どうにもならん‥‥なんとか車まで連れていってくれ。。。
――ほんの数秒、俺を観察した女房。
女房 「自分のことは自分でなんとかしな! あたしは帰るから!」
え”。。。

女房に置き去りにされた俺は、なんとか自力で、、、帰れない。だめだ、この激痛、とても歩けない。トイレから数歩進んだところでうずくまり、激痛が収まるのを待つ‥‥‥‥収まらない。ぐあああっ、た、耐えられないっ、なんなんだ、この激痛わぁ。もはや、うずくまってる余裕すらない。地べたに尺取り虫状態に。
通りすがりの先生 「どうしましたっ?」
あ、は、腹‥‥がっ。。。ぐえっ。。。
通りすがりの先生 「救急車、呼びますかっ?」
よ、、、呼んで、、、呼んでくれぇぇ。
通りすがりの先生 「おーい! 救急車だーっ! 救急車を呼べーっ!」
その一言で、先生たちが集まり始め、やがて人だかりが。しばらくすると、話を聞きつけたのか、その人だかりをかき分け、
長女 「お父さん?! どうしたのっ?!」
長女の姿が‥‥。


――ちょうどその頃。俺の姿を見て「これは食中毒だ」と直感した女房は、急ぎ家に向かっていた。次女にも同じ症状が出るのでは? そう思ったからである。

後述するが、女房はすでにこのとき、食中毒の原因まで想像がついていた。

果たして、次女にも同じ症状が出ていた。猛烈な吐き気を感じた次女は、なんとか洗面所へ行こうとしたが間に合わず、その途中で吐いてしまい、女房が家に戻ったときには、次女は洗面所の手前で、シロ目をむいて倒れていた――。

このとき、女房にも症状が出始めていた。しかし、なんとしても次女を病院へ運ばなければならない。次女を抱き上げ車に乗せた女房は、自分で自分の腕をツネり、とにかく腕をツネりまくり、必死で気を持たせながらハンドルを握り、病院へ――。

なんとか病院へたどり着くも、受付の前に立つまでが限界だった。その場で吐き始めてしまった女房は、次女とともに、即座に診察室へと運ばれ――。


――やはり同時刻。女房の両親が熊谷へ帰る道中でのこと。
義父 「う”。。。」
義母 「どうしたん?」
義父 「ちょっと‥‥車を止め‥‥」
義母 「なんなん?」
義父 「あ”う”。。。シャーッ!」
義母 「ちょっと! いったいどうしたん?!」
義父 「これは‥‥アタった。。。うう”。。。シャーッ!」
義母 「アタったって‥‥。あっこ(←女房のこと)が作ったお昼のお弁当かいっ?」(あなたも一緒に作ってます)
義父 「他には考えられない。。。あっこには、お弁当でアタったって言うなよ。そんなこと知らせたら、かわいそうだから‥‥」(親心だねぇ)


話は学校の校庭に戻る。

なぜ女房が俺を置き去りにしたのか、激痛で頭が回らなかったが、救急車が到着する頃には、なんとか把握できていた。この症状が出ているのは、俺だけじゃないはずだ。次女は大丈夫だろうか。長女にも症状が出るのでは。。。
救急隊員 「担架に乗れますか? これに乗ってください」
担架に手をつき、乗ろうとしたが‥‥、あ、待って、その前に、もう一度、トイレに、連れて行ってください。
救急車の中で吐かないよう、これでもか! と口の中に指を突っ込み、もうこれ以上は何も出ないというレベルまですべて吐ききった後で、担架に乗せてもらう。
長女 「お父さんっ、だいじょうぶっ?」
運動会の校庭に救急車がやってきて騒ぎになり、その当事者が自分の父親で、「Nちゃんのお父さんなのっ?」と聞かれまくり、父親に「お前も乗れ!」と言われ、一緒に救急車に乗せられてしまった――という状況を、長女はどうとらえて良いのかわからず、ただひたすらに大粒の涙を流し続けていた。。。


さて――。これは食中毒である。お弁当でアタったのだ。 しかし、このお弁当は女房と義母の合作で、おかずがたくさん入っていたため、食材を特定するのは大変そうだが‥‥あっさり特定できた。 ここで少し時間をさかのぼり、お弁当時の会話を再現しよう。

女房 「‥‥なんかコレ、味がしないね」
義父 「ほんとだよ。なんだねコレは。味がしないがね」
次女 「おいしくなーい」
義母 「どらどら‥‥」
女房 「バーバ、やめな、食べない方がいいよ。こっちを食べて」
長女 「あたしは疲れすぎて食欲ないから、コレはいらない」

もうわかっただろう(って、わからねーだろ、それだけじゃ)。義母と長女にはまったく症状が出なかった。つまり、他の4人は食べたが、義母と長女だけは食べなかった物――上記の会話の中の「コレ」こそが原因である。

では、「コレ」とは何だったのか――。おにぎりである。いや、正確には、おにぎりに、た〜くさん入っていた、そりゃあもうあんた大ビン丸ごとぜ〜んぶ入っていた鮭フレークこそが原因である。

上記の会話の通り、女房も、次女も、義父も、おにぎりを1個だけ食べている(正確には、1個全部は食べず、味がおかしかったので途中で残している)。

では私は、いったい何個食べたのか。なんと5個も食べてしまった。アホだ、食い過ぎだ、なぜそこまで食う、変な味したんだろーが、味覚オンチかお前は。だって、朝ご飯を食べ損ねちゃって、とってもお腹が空いていたんですもの。。。

そもそも、おにぎりに使った鮭フレークは、とーっくの昔に賞味期限が切れていた(色だって変だったし)。そして女房は、その事実に気づいていた。気づいちゃいたが、義母に「おにぎりの具はどうするん!」と言われて焦り、とっさに長い間常温で放置してあった鮭フレークを出してしまったのだ、たわけが。

加えてこの日は朝からとっても暑く、ええもうとにかく暑い日で、そんな中、お昼までずっと直射日光にお弁当をさらし続けていた。よーするに、アタるべくして直撃クリティカルヒットオオアタリしたのである。


救急車に乗ってからの経緯(いきさつ)は、「ショート入院」に書いた通りである。

入院したのは私だけ。女房と次女は、夜には帰宅することができた。

退院後――。晴れの運動会の日に、校庭に救急車を呼び込むとゆー、大変な迷惑をかけてしまったので、菓子折を持って学校を訪問することに。

校門を入ると――。
知らない先生A 「あっ、おささんじゃないですか! もう良くなったんですかっ?」
下駄箱へ行くと――。
知らない先生B 「おささん! もう大丈夫なんですかっ?」
廊下を歩けば以下同文。階段を上れば以下同文。やばい、完全に顔を知られてしまった。(汗)

さらに、職員室になんか入っちゃったら、先生方がわーわー寄ってくるわ寄ってくるわ。あれからどうなっただの、何が原因だったんだだの、どうしてそんなことになったんだだのって。「いやぁ、心配しましたよ」なんて口では言いつつ、笑いすぎなんだよ、あんたら!