妙なところで引っ込み思案

とある休日。女房、次女と一緒に、菖蒲にある茶店付きの大型書店へ。自分は一人喫煙ルームに入り、ゆっくりと読書をしながら過ごす。

――3時間後。
女房「そろそろ帰ろう。次女と一緒に先に駐車場に行ってるから」
ああ、わかった。
灰皿とカップを片付け、出口へ向かおうとすると……視線を感じる。目をやると……お、お、O部長! 奥さんもご一緒で! なぁぜここにっ?
O部長「俺んちから車で30分くらいだし、ドライブがてら、お茶飲みに来ただけだ」
茶店を飛び出し、駐車場で女房を捕まえる。
お、おいっ、O部長がいた、O部長が!
女房「ええっ! なんでっ!」
お茶飲みに来たんだと。奥さんも一緒だ。挨拶に行こう。
次女「あたしも行く」
女房「わかった。行こう」
ところが歩き出すと、
女房「あ、ちょっと待って。やっぱり無理。恥ずかしい」
恥ずかしいって、なにがだ?!
次女「お母さん、なに言ってんの?! O部長なんだよっ。挨拶しなきゃだめでしょ!」
女房「わかった。行こう」
ところが歩き出すと、
女房「あ、ちょっと待って。やっぱり無理。今日はお化粧してないから」
昨日はしてたんかい!
女房「だって、お化粧くらいしてないと会えないでしょ」
次女「お母さん、そんなこと言ってる場合?! お化粧してるうちにO部長帰っちゃうかもしれないでしょ?!」
女房「わかった。行こう」
ところが歩き出すと、
女房「あ、ちょっと待って。やっぱり無理。今日は太ってるから」
昨日は痩せてたんかい!
女房「だって、もうちょっと痩せてからでないと会えないでしょ」
いつ痩せるんだ! 3分後か、5分後か?!
女房「そんなすぐに痩せるわけないでしょ! なに無茶なこと言ってんのよ!」
次女「だめだこりゃ。帰ろ帰ろ」