アジサイ幽霊

5年半前、社内のNetNewsに投稿したテキストです。

これは、昭子(仮名)の体験記です。

いつからか昭子は、妙にアジサイに惹かれるようになった。アジサイを見る度に、「庭にアジサイを植えたい」と強く思うようになり、アジサイに囲まれて生活する自分を夢見ていた。

そんなある日のこと。。。その日は朝から暑く、夜になっても気温は下がらず、眠れぬままに時間が過ぎていった。乳幼児がいるため、なるべくクーラーはつけないようにしていたが、とうとう暑さに我慢ができず、クーラーをつけるために起き上がろうとした。。。

ところが、どうしたことか体が動かない!
「まさか、金縛り?」
しかし、昭子はあわてず、体が動くようになるのを待つことにした。

そのとき、ふと・・・気付いた。庭に面した部屋の隅が青白く光っているのを。。。
「何かが光っている!?」
昭子は恐る恐る目を部屋の隅に向けてみた。するとそこには・・・
なんとアジサイの花があった。青白い光に包まれたアジサイの花がゆらゆらと揺れている。
「どうして、こんなところにアジサイの花が・・・」
さらに目を向けると、そのアジサイの横に女がいる。
髪が長く、薄い着物を着た女がうつむいて座っている。
「ひっ!」
昭子は声にならない声を上げ、恐怖に顔がひきつった。
そして必死に助けを求めようとした。が、声が出ない!
もう一度、部屋の隅にいる女に目を向けたそのとき、女が口を開いた。
「植えるなぁ〜」
そう言うと、その女は消え、そしてアジサイも消えた。。。


翌日。
「きっとアジサイを植えると悪いことが起きるということを、あの幽霊は教えてくれたんだ」
そう思った昭子は、きっぱりとアジサイを諦めることにした。そして友人に、
「これこれこんなことがあったから、アジサイは諦めた」
と話した。しかし、友人の解釈は違うものだった。
「その幽霊ってさあ、"植えるな" って言ったんじゃないと思うよ」
「だって、はっきりそう言ったよ」
「きっと英語で "Well, now!" って言ったんだよ。だから、今すぐ植えたほうがいいよ」
それを聞いた昭子の亭主が、
「外人の幽霊が着物姿で出るわけねーだろっ!」
と突っ込んだところ、
「じゃあ "植える、Now!" だったのかもしれない」
という新たな解釈まで生まれてしまい、昭子はどうしたものかと悩み続けている。。。